「AIの仕事」と一口に言っても、中身はばらばらです。 求人サイトごとに呼び名も違い、比べるのが難しい。

そこで使えるのが、**経済産業省とIPAが定めた「DX推進スキル標準」**です。DXを進めるのに必要な役割を、6つの類型に整理しています。国が作った共通の地図があるなら、それに乗るのが早い。

この記事の要点

  • 類型は 6つ。5類型としている情報が多いが、公式の現行記載は6類型
  • 各類型は指示・依頼の関係ではなく、協働する関係(公式が明記)
  • どれか一つに閉じる話ではない。隣とどうつながるかが要

そもそも何のための標準か

IPAの説明では、この標準が作られた背景はこうです。

日本企業がDXを推進する人材を十分に確保できていない背景として、自社のDXの方向性を描くことや、自社にとって必要な人材を把握することの難しさに課題があるのではないか

**「どんな人が必要なのか、企業側も分かっていない」**という問題意識です。だから役割を定義して、共通言語にした。

デジタルスキル標準(DSS)は2層になっています。

標準対象
DXリテラシー標準(DSS-L)全員向け。DXに関するリテラシーを身につけるためのもの
DX推進スキル標準(DSS-P)推進する人向け。役割と習得すべきスキルを定義

この記事で扱うのは、後者の DSS-P です。

6つの類型

公式の定義をそのまま紹介します。 自分がどれに近いか、読みながら当てはめてみてください。

①ビジネスアーキテクト

ビジネスや業務の変革で実現したい目的を定義したうえで、経営視点で最適なビジネスモデルと業務プロセスを設計し、戦略を行動に落とし込み、成長サイクルを生み出しながら、関係者をコーディネートしプロセス全体を牽引して成果を創出する役割

技術者ではありません。 目的を決め、設計し、人を動かして成果まで持っていく役割です。企画・事業開発の経験がある人が近い位置にいます。

②デザイナー

ビジネスの視点、顧客・ユーザー視点、コミュニケーション視点等を総合的にとらえ、製品・サービスの方針や開発のプロセスを策定するとともに、ブランドメッセージやタッチポイントを含むコミュニケーション設計を担い、それらに沿った製品・サービスのありかたのデザインを担う役割

見た目を作る人、ではありません。 方針とプロセス、そして体験の設計まで含まれます。

③データサイエンティスト

DXの推進において、データを活用した業務変革や新規ビジネスの実現に向けて、データを収集・解析する、やAIシステムに関する仕組みの設計・実装・運用を担う役割

AIシステムの設計・実装・運用までが定義に入っています。分析だけの役割ではありません。

④データマネジメント

データの安全性・信頼性の確保継続的な流通の仕組みの設計・実装・運用を行い、組織全体の人材を巻き込んだデータの利活用、データによる価値創出を促進する役割

5類型としている解説では、ここが抜けています。 分析する人(③)とは別に、データが安心して流れる状態を作る人が要る、という整理です。

🔍 編集部の本音 「データマネジメント」が独立したのは示唆的です。分析できる人を採っても、データが整っていなければ何も出てこない——多くの現場がぶつかった壁が、そのまま類型として立った形だと思います。地味に見えて、いま最も需要が伸びる領域かもしれません。

⑤ソフトウェアエンジニア

DXの推進において、デジタル技術を活用した製品・サービスを提供するためのシステムやソフトウェアの設計・実装・運用を担う役割

いわゆる開発者です。AIを組み込んだ製品を作る側にあたります。

⑥サイバーセキュリティ

業務プロセスを支えるデジタル環境におけるサイバーセキュリティリスクの影響を抑制する対策を担う役割

AIの利用が広がるほど、この役割の重みは増します。

一つを選んで閉じる話ではない

公式が、はっきり書いている部分があります。

DXを推進する人材は、他の類型とのつながりを積極的に構築した上で、他類型の巻き込みや他類型への手助けを行うことが重要です。 各類型の役割はどちらかがどちらかに指示をする、又は依頼する、といった形ではなく、様々な場面で二つ(又はそれ以上)の類型が、協働関係を構築し、連携することが重要

上下関係ではなく、横の関係だと明記されています。

これはキャリアを考えるうえでも効きます。「データサイエンティストになる」と決めても、ビジネスアーキテクトの言葉が分からなければ成果まで届かない。逆に企画職の人がデータの基礎を知れば、③④と組める。

自分の軸足を1つ決めて、隣2つの言葉が分かる状態——これが現実的な目標だと思います。

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自分はどこから入るか

いまの仕事から、近い類型を探すのが最短です。

いまの仕事近い類型足すもの
企画・事業開発・コンサルビジネスアーキテクトデータの読み方、AIで何ができるか
デザイン・マーケティングデザイナーユーザー理解をデータで裏づける力
分析・リサーチ・経理データサイエンティスト統計・Python・機械学習
情報システム・DB・インフラデータマネジメントデータ基盤、ガバナンス
開発・SEソフトウェアエンジニアAIを組み込む実装
情シス・セキュリティサイバーセキュリティAI固有のリスク

ゼロから転向するより、いまの持ち場から一歩ずらすほうが速いのは、どの類型でも同じです。未経験からの入り方は未経験からAI人材になれる?、実装側の道筋はAIエンジニアになるには?にまとめています。

「作る人」と「使う人」の違いが曖昧な場合は、AIエンジニアとAI活用人材の違いを先に読むと整理できます。

生成AIはどう位置づけられているか

更新履歴を見ると、この標準は生成AIの登場に合わせて改訂されてきたことが分かります。

  • 2023年8月:DXリテラシー標準に生成AIに関連する記載を追加して改訂
  • 2024年7月:DX推進スキル標準に生成AIに関する補記などを追加した ver.1.2 を公開
  • 2026年4月ver.2.0 を公開

注目したいのは、2023年にまず「リテラシー標準」(全員向け)のほうが改訂されたことです。 生成AIは専門職だけの話ではなく、働く人全員の前提として扱われている、という順番が読み取れます。

学び始めの地図は生成AI独学ロードマップ、スキルが転職市場でどう評価されるかはAIスキルは転職市場で本当に価値があるかにまとめています。

FAQ

Q. 類型はいくつありますか? A. 6つです。ビジネスアーキテクト/デザイナー/データサイエンティスト/データマネジメント/ソフトウェアエンジニア/サイバーセキュリティ。

Q. 5類型と書いてある情報を見ました。 A. IPAの現行ページの記載は6つの類型で、データマネジメントが含まれています。更新履歴には2026年4月16日にver.2.0公開に伴う更新があります(データマネジメントがどの版で加わったかは公式に明記されていないため、本記事では断定していません)。

Q. エンジニアでなくてもAIの仕事に就けますか? A. 就けます。ビジネスアーキテクトデザイナーは、技術の実装が中心の役割ではありません。

Q. どれか一つを選ぶ必要がありますか? A. 公式は、類型間が指示・依頼の関係ではなく協働関係であると明記しています。軸足を決めつつ、隣の類型と組める状態が現実的です。

Q. データサイエンティストとデータマネジメントはどう違いますか? A. データサイエンティストは活用(分析・AIシステムの設計実装運用)、データマネジメントは基盤(安全性・信頼性の確保と流通の仕組み)が軸です。

Q. この標準は何に使えますか? A. 経産省とIPAが個人の学習および企業の人材確保・育成の指針として策定したものです。求人票の役割を読み解いたり、学ぶ順番を決めたりする物差しになります。

まとめ

  • AI・DXの職種は、国の 「DX推進スキル標準」6類型 で整理できる
  • 「データマネジメント」を含む6類型が現行。5類型の情報は現行と食い違う
  • 類型は上下関係ではなく協働関係と公式に明記されている
  • 入り口はいまの仕事から一歩ずらすのが現実的
  • 生成AIは**まずリテラシー標準(全員向け)**に反映された。専門職だけの話ではない

次に読む:AIエンジニアになるには?未経験からAI人材になれる?


※標準は改訂されます。最新の内容はIPA「デジタルスキル標準」でご確認ください。

出典

最終更新:2026年8月12日/fondantAI編集部