教育訓練給付金には、税金がかかりません。

根拠は雇用保険法の条文にあります。第12条にこう定められています。

租税その他の公課は、失業等給付として支給を受けた金銭を標準として課することができない。

そして第10条で、失業等給付の中に教育訓練給付が含まれることが定められています。

ただし、確定申告がまったく関係しないわけではありません。 給与所得者の特定支出控除を使う場合、給付された部分を差し引く必要があります。

この記事の要点

  • 給付金自体は非課税(雇用保険法第12条)
  • 検索で出てくる「雑所得」の情報は別制度の話
  • 特定支出控除を使う場合のみ申告に関係する

⚠️ 以下は2026年8月14日に条文と国税庁のタックスアンサーで確認した内容です。個別の判断は、所轄の税務署または税理士に確認してください。

なぜ非課税なのか

条文を2つ並べると、はっきりします。

雇用保険法 第10条第1項

失業等給付は、求職者給付、就職促進給付、教育訓練給付及び雇用継続給付とする。

同 第10条第5項

教育訓練給付は、次のとおりとする。 一 教育訓練給付金 二 教育訓練休暇給付金

同 第12条

租税その他の公課は、失業等給付として支給を受けた金銭を標準として課することができない。

教育訓練給付金は失業等給付の一種であり、失業等給付には公課を課すことができない。 これが非課税の根拠です。

したがって、給付金を受け取ったこと自体を理由に確定申告をする必要はありません。

「雑所得になる」という情報について

検索すると、教育訓練給付が「雑所得」として課税されるという情報が出てくることがあります。

これは別の制度についての回答です。

国税庁の文書回答事例に、「緊急人材育成支援事業による職業訓練等を受講する者に支給される訓練・生活支援給付金等の課税関係について」(平成22年)というものがあります。ここでは確かに「雑所得として取り扱われる」とされています。

しかし、この照会の対象は次の給付金です。

雇用保険を受給できない者(求職者給付の受給資格がない者又は受給が終了した者等)に対する職業訓練の実施、再就職、生活への支援を主たる目的とする緊急人材育成支援事業

そして、雑所得とされた理由がこう書かれています。

これらの給付とは異なるものであることから、雇用保険法第12条及び雇用対策法第22条の公課の禁止規定は適用されない

「異なるものだから第12条が適用されない」=失業等給付には第12条が適用される、ということです。

この回答は、むしろ教育訓練給付金が非課税であることの裏側からの裏付けになっています。 制度名が似ているため、誤読されやすい部分です。

🔍 編集部の本音 この論点は、検索して最初に出てきたページだけを読むと逆の結論になる典型例だと思います。国税庁のページに「雑所得」と書いてあるので、そのまま信じてしまう。でも、そのページが何の制度について書いているかを読むと違う。 お金の話は、根拠の条文まで戻らないと危ないという例です。

確定申告が関係する場面

給付金が非課税でも、確定申告が出てくる場面があります。給与所得者の特定支出控除です。

特定支出控除とは

仕事に必要な支出が一定額を超えたとき、確定申告で控除を受けられる制度です。

国税庁のタックスアンサーによると、対象は次の7つです。

#特定支出
1通勤費
2職務上の旅費
3転居費
4研修費(職務に直接必要な技術や知識を得るための研修)
5資格取得費(職務に直接必要な資格を取得するための支出)
6帰宅旅費
7勤務必要経費(図書費・衣服費・交際費等。合計65万円が上限)

スクールや講座の受講料が関係するのは、4と5です。

控除できるのは、特定支出の合計額が給与所得控除額の2分の1相当額を超えた場合の、その超える部分です。

給付金が出た部分は特定支出から除く

ここが本題です。 タックスアンサーにこう書かれています。

②雇用保険法による**「教育訓練給付金」や母子および父子ならびに寡婦保護法による「母子(父子)家庭自立支援教育訓練給付金」が支給される部分がある場合におけるその支給される部分については、特定支出には含まれません。**

つまり、こうなります。

  • 受講料 60万円
  • 教育訓練給付金 48万円(80%)を受給
  • 特定支出として計上できるのは、給付されなかった12万円の部分

給付金を受け取った分まで控除しようとすると、二重に得をすることになるためです。

同じ考え方で、会社から補助が出た部分も除かれます(給与の支払者から補てんされ、その補てんに所得税が課税されていない場合)。

証明が必要

特定支出控除を受けるには、証明書が要ります。

  • 原則は**給与の支払者(勤務先)**による証明
  • 令和5年分以後は、研修費・資格取得費のうち教育訓練に係る部分について、キャリアコンサルタントによる証明でも可能

勤務先に証明を頼みにくい場合の経路が用意されているということです。

手続きは確定申告です。 特定支出に関する明細書と証明書を添付し、支出の事実と金額を証する書類を添付または提示します。

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まとめると、こうなります

状況確定申告
給付金を受け取っただけ不要(非課税のため)
給付金を受け取り、特定支出控除は使わない不要
特定支出控除を使いたい必要(給付された部分は除いて計算)
他に申告が必要な事情がある(副業、医療費控除など)その事情に応じて必要

多くの人は、1行目か2行目に当てはまります。

注意しておくこと

  • 住民税・社会保険料の算定における扱いについては、この記事では触れていません。 一次情報を確認していないためです。気になる場合は、お住まいの自治体または年金事務所に確認してください
  • 特定支出控除は、給与所得控除額の2分の1という高いハードルがあります。 受講料が数十万円でも、届かないことがあります。使えるかどうかは金額次第です
  • 税制は改正されます。 この記事は2026年8月時点の条文とタックスアンサー(令和7年4月1日現在法令等)に基づいています
  • 個別の判断は、所轄の税務署または税理士に確認してください

FAQ

Q. 教育訓練給付金を受け取ったら確定申告が必要ですか?

A. 給付金を受け取っただけなら不要です。 雇用保険法第12条により、失業等給付には租税その他の公課を課すことができず、教育訓練給付金は同法第10条で失業等給付に含まれています。

Q. 「雑所得になる」という情報を見ました。

A. それは別の制度についての情報です。 国税庁の文書回答事例で雑所得とされているのは、雇用保険を受給できない人への「訓練・生活支援給付金」(緊急人材育成支援事業)であり、教育訓練給付金ではありません。同じ回答の中で、失業等給付には公課の禁止規定が適用されることが前提とされています。

Q. 受講料を確定申告で控除できますか?

A. 給与所得者の特定支出控除の対象になる可能性があります(研修費・資格取得費)。ただし、教育訓練給付金が支給された部分は特定支出に含められません。また、特定支出の合計が給与所得控除額の2分の1を超える必要があります。

Q. 会社に知られずに特定支出控除を使えますか?

A. 令和5年分以後は、研修費・資格取得費のうち教育訓練に係る部分について、キャリアコンサルタントによる証明が認められています。 従来は給与の支払者(勤務先)の証明が必要でした。

Q. 会社から受講料の補助が出た場合はどうなりますか?

A. 給与の支払者から補てんされ、その補てんに所得税が課税されていない部分は、特定支出に含まれません。 給付金と同じ扱いです。

Q. 住民税や社会保険料には影響しますか?

A. この記事では扱っていません(一次情報を確認していないため)。自治体または年金事務所に確認してください。

まとめ

  • 教育訓練給付金は非課税。 雇用保険法第10条で失業等給付に含まれ、第12条で公課を課せないと定められている
  • 「雑所得」の情報は別制度(雇用保険を受給できない人への訓練・生活支援給付金)の話。誤読しやすい
  • 給付金を受け取っただけなら、確定申告は不要
  • 特定支出控除を使う場合は申告が必要。 ただし給付された部分は特定支出から除く
  • 特定支出控除には給与所得控除額の2分の1超というハードルがある
  • 令和5年分以後、キャリアコンサルタントによる証明の経路がある
  • 個別の判断は税務署・税理士へ

制度全体の地図は教育訓練給付金の全体マップ、いくら戻るかは給付金はいくら戻る?、受給条件は教育訓練給付金の受給条件、支給の時期は給付金はいつ振り込まれる?にまとめています。