生成AIに入力した情報は、自分の手を離れる可能性があります。だから「他人に見られて困る情報は入れない」が基本です。 ただし実務では、個人情報や社内の事情に触れずに相談するのが難しい場面もあります。この記事では、禁止事項を並べるだけでなく、入力せずに相談する具体的な方法まで扱います。
この記事の要点
- 情報が残り得る場所は3つ。会話履歴・サービス改善への利用・提供者側のログ
- 基本は「消せない前提」で運用する
- 実務のコツは、入力しないことではなく「置き換えて相談する」こと
なぜ入力に注意が必要なのか
入力した内容がどう扱われるかは、サービス・プラン・契約によって異なります。 設定で変更できる場合もあれば、初期設定のまま使うと想定と違う扱いになることもあります。
情報が残り得る場所は、大きく3つあります。
| 残る場所 | 何が起きるか |
|---|---|
| 会話履歴 | 自分のアカウントに保存される。端末を共有していれば他人が見られる |
| サービス改善への利用 | 入力内容が品質向上のために使われる場合がある(設定で変えられることも) |
| 提供者側のログ | 不正利用の監視などのため、一定期間保持される場合がある |
3つ目は、設定では消せないことがあります。 だから「オフにしたから安全」とは言い切れません。
扱いはサービスごとに異なり、変更されることもあります。 業務で使う場合は、必ず各社の公式情報をご確認ください。
公的機関も注意喚起を出している
これは個人の心がけの話にとどまりません。個人情報保護委員会は、令和5年(2023年)6月2日に「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」を公表しています。
事業者が生成AIのプロンプトに個人情報を入力する場合の留意点や、要配慮個人情報の取扱いについての内容が含まれています。社内でルール整備を提案する際の裏づけとして使える資料です。詳しい内容は原文をご確認ください。
なお、個別の事案に法令がどう適用されるかの判断は、専門家や公的機関にご相談ください。
入力してはいけない情報
- 個人情報:氏名・住所・電話番号・メールアドレス・マイナンバーなど
- 顧客情報・取引先情報:名簿、取引条件、担当者名
- 社外秘の資料:未公開の数字、企画、議事録、契約書
- 認証情報:パスワード、APIキー、アクセストークン
- 健康や信条など、特に配慮が必要な情報
- 他人から預かった情報:自分の判断で入力してよいものではありません
**「他人に見られて困る情報は入れない」**を合言葉にすると判断しやすくなります。
実務のコツ:置き換えて相談する
ここがこの記事の本題です。 「入力しない」だけでは、実務は回りません。クレーム対応の相談も、契約書の確認も、個別の事情を伝えないと役に立つ答えが返ってこないからです。
解決策は、情報を落とすのではなく、置き換えることです。
置き換えの手順
| 元の情報 | 置き換え後 |
|---|---|
| 株式会社〇〇(取引先名) | A社 |
| 山田太郎様(顧客名) | お客様 |
| 主力製品「〇〇シリーズ」 | 主力製品 |
| 2026年8月15日納品予定 | 来月中旬納品予定 |
| 従業員1,200名の△△工業 | 従業員1,000名規模の製造業 |
判断の軸は「その情報がなくても、欲しい答えは得られるか」です。
たとえば「取引先へのお詫びメールの書き方」を相談するのに、実際の会社名は要りません。必要なのは「BtoBの取引先」「納期が遅れた」「継続的な関係を維持したい」という状況の構造だけです。
数値も丸める
具体的な売上や単価は、桁と傾向だけ残せば十分なことが多くあります。「前年比で約1割減」と伝えれば、分析の相談は成立します。
逆に、置き換えられない場合
固有名詞や実際の数値がないと答えが出ない相談——たとえば実際の契約書の条文チェックなど——は、そもそもAIに投げるべきかを考え直してください。 法人向けの契約でデータの取り扱いが担保された環境を使うか、人に相談するほうが適切です。
よくある入力事故のパターン
実際に起きやすいのは、判断を誤った場面より、判断していない場面です。
- 添付ファイルをそのまま渡す:本文は気をつけていても、添付した資料の中に個人情報が残っている
- スクリーンショットの写り込み:画面の一部を撮ったつもりが、通知やタブのタイトル、別ウィンドウの内容まで入っている
- コピー元の余分な情報:メール本文をコピーしたとき、署名や宛先が一緒に入っている
- 「一部だけ」のつもりが全文:長い資料の一部を貼るつもりで、範囲選択を誤る
- 社内の略称が特定の手がかりになる:一般名詞に見えても、業界内では固有名詞として通用することがある
共通しているのは、入力する内容を最後まで目視していないことです。貼り付けたあと、送信前に一度読み返すだけで、多くは防げます。
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多くのサービスでは履歴の削除ができます。しかし、削除がどこまで及ぶかはサービスによって異なります。
- 画面上の履歴は消えても、提供者側のログには一定期間残ることがある
- すでに改善のために利用された内容が、遡って取り消せるとは限らない
「消せる前提」で入力し、あとで消すという運用は避けてください。 入力する前に判断するのが唯一確実な方法です。
個人利用でも気をつけること
業務の話に見えますが、個人利用でも同じです。
- 自分の情報:住所、勤務先、通院歴などを安易に入力しない
- 家族の情報:本人の許可なく、他人の情報を入力しない
- 写真の写り込み:画像を送るとき、背景や画面に何が写っているかを確認する
- 端末の共有:家族と共有している端末では、会話履歴が見られる可能性がある
業務で使うときの手順
- 所属先のルールを確認する:多くの組織がAI利用のルールを定め始めています
- 使ってよいサービスを確認する:無料版と法人向けでデータの扱いが異なる場合があります
- 設定を確認する:改善への利用や履歴の保存について、変更できる項目があるか
- 置き換えを習慣にする:固有名詞を出さないことを、初期設定の癖にする
- 判断に迷ったら入力しない:迷う時点で、たいてい入力すべきではありません
組織としてのルール作りは管理職・経営者のAI活用、行政での取り扱いは公務員の仕事はAIでどう変わる?で扱っています。
なお、外部から取り込んだ文書をAIに処理させる場合には、別のリスクもあります(プロンプトインジェクションとは)。リスク全般の整理は生成AIのリスクと課題へ。
FAQ
Q. 無料版と有料版で扱いは違いますか? A. サービスやプランによって、入力データの扱いが異なる場合があります。法人向けのプランでは、改善への利用が行われない契約になっていることもあります。 必ず各サービスの公式説明をご確認ください。
Q. 入力した情報は消せますか? A. 履歴の削除や、改善への利用を停止する設定を用意しているサービスもあります。ただし削除がどこまで及ぶかは仕様によります。 「消せない前提」で入力を控えるのが安全です。
Q. 個人情報を入力してしまいました。どうすればいいですか? A. まず履歴の削除など、利用中のサービスで可能な対応を確認してください。業務に関わる情報であれば、所属先の定められた窓口に速やかに報告してください。判断に迷う場合は専門家や公的機関にご相談ください。
Q. 会社名を伏せれば大丈夫ですか? A. 会社名だけでなく、組み合わせで特定できてしまう情報にも注意が必要です。業種・規模・地域・時期が揃うと、伏せ字でも推測できることがあります。必要最小限まで削るのが基本です。
Q. 個人利用でも気をつけるべきですか? A. はい。自分や家族の情報も、安易に入力しないのが安全です。特に他人の情報は、本人の許可なく入力すべきではありません。
まとめ
- 情報が残り得るのは会話履歴・サービス改善への利用・提供者側のログの3か所
- 「消せる前提」で入力しない。入力前の判断が唯一確実な対策
- 実務のコツは入力しないことではなく、置き換えて相談すること(A社・お客様・約1割減)
- 組み合わせで特定できる情報にも注意する
- 個人情報保護委員会が事業者向けの注意喚起を公表している。社内提案の裏づけに使える
- 迷ったら入力しない。 迷う時点で、たいてい入力すべきではない
次に読む:生成AIのリスクと課題/プロンプトインジェクションとは/生成AIのリスクと課題は?知っておくべき7つと使う側の心得/生成AIと著作権/管理職・経営者のAI活用
※各AIサービスのデータ取り扱いは変更されることがあります。最新は必ず公式情報でご確認ください。本記事は一般的な解説であり、個別の法令適用の判断を示すものではありません。必要に応じて専門家や公的機関にご相談ください。
出典
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(令和5年6月2日公表/2026年7月25日確認)
- 各AIサービスのデータ取り扱い・利用規約は各社公式情報
最終更新:2026年7月25日/fondantAI編集部
