生成AIのリスクは、誤情報・情報漏えい・著作権・悪用・偏り・依存・セキュリティの7つに整理できます。 ただし、7つを並べて眺めても行動は変わりません。役に立つのは、自分が「被害を受ける側」なのか「与える側」なのかで分けて考えることです。この2つでは、取るべき対策がまったく違います。

この記事の要点

  • リスクは受ける側3つ・与える側4つに分かれる。優先度は立場で決まる
  • 個人利用でいちばん重いのは誤情報、業務利用では情報漏えい
  • 多くは使い方で下げられる。リスクを理由に使わない判断にも、別のコストがある

リスクを2つに分けて考える

立場リスク
被害を受ける側(自分が困る)誤情報/偏り/依存
被害を与える側(他人や会社が困る)情報漏えい/著作権/悪用/セキュリティ

上の3つは、自分が気をつければ済みます。 下の4つは、失敗すると自分以外に影響が及びます。組織で使う場合、優先すべきは下の4つです。

1. 誤情報(ハルシネーション)|受ける側

起きる仕組み:生成AIは「次に来る言葉として、ありそうなもの」を選んでいます。事実かどうかを確かめる仕組みは持っていません。だから、知らないことについても、もっともらしい文章を作れてしまいます。

よくある失敗:存在しない法律の条文、実在しない書籍名、微妙に違う数値。もっともらしいほど見抜きにくいのが厄介です。

今日できる対策制度・数値・固有名詞の3つだけは一次情報で確認する。 それ以外の文章表現は、多少ずれていても実害は小さいことが多いです。仕組みはハルシネーションとは?、実例はAIやらかし集で扱っています。

2. 情報漏えい|与える側

起きる仕組み:入力した内容がどう扱われるかは、サービスやプラン、契約によって異なります。サービス改善のために使われる設定になっている場合もあります。

よくある失敗:顧客名簿を貼って要約させる、未公開の契約書を添削させる、社内の障害報告をそのまま相談する。悪意なく、便利さから起きます。

今日できる対策氏名・連絡先・顧客情報・未公開情報は入力しない。 固有名詞は「A社」「主力製品」のように置き換えれば、多くの場合そのまま使えます。業務では所属先のルールを先に確認してください。関連する論点はAIと個人情報・プライバシーへ。

3. 著作権・権利|与える側

起きる仕組み:学習データの扱い、生成物が既存の作品に似てしまう可能性など、複数の論点があります。

よくある失敗:生成した画像やキャッチコピーを、確認せずに商用で使う。特定の作風を指定して生成し、そのまま公開する。

今日できる対策公開・販売する前に、既存の作品と似ていないかを確認する。 特定の作家名やブランド名を指定して生成したものは、特に慎重に扱ってください。考え方は生成AIと著作権で解説していますが、個別の法的判断は専門家にご相談ください。

4. 悪用(フェイク・詐欺)|与える/受ける両側

起きる仕組み:本物そっくりの画像・音声・動画を作れるため、なりすましや詐欺に使われます。文章生成も、巧妙な詐欺メールの作成に悪用され得ます。

よくある失敗:受け手として騙される、というのがいちばん現実的なリスクです。

今日できる対策「本人からの連絡でも、金銭が絡む話は別経路で確認する」 を習慣にする。声や映像は、もはや本人確認の根拠になりません。詳しくはディープフェイクとはへ。

5. 偏り(バイアス)|受ける側

起きる仕組み:学習に使われたデータに偏りがあれば、出力にもその傾向が出ます。AIが差別的な意図を持っているのではなく、元のデータを映しているだけです。

よくある失敗:採用や評価の場面で、AIの出力を無批判に使う。職業や役割について、固定観念を含んだ表現が混じる。

今日できる対策人の評価に関わる判断には使わない。 使う場合も、出力をそのまま採用せず、複数の視点で確認します。詳しくはAIのバイアスとはへ。

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6. 依存・考える力の低下|受ける側

起きる仕組み:答えがすぐ出るため、自分で考える工程を飛ばしやすくなります。

よくある失敗:AIが出した結論を、自分の考えとして説明できないまま提出する。深掘りされて答えられなくなる。

今日できる対策「AIに整理させる前に、自分の考えを一度書く」。順番を守るだけで、判断の主導権が手元に残ります。使うときも、結論ではなく「反対意見を挙げて」と頼むと、考える工程が残ります。

7. セキュリティ|与える側

起きる仕組み:AIに読ませた文書やWebページの中に、悪意ある指示が仕込まれていると、AIがそちらに従ってしまうことがあります(プロンプトインジェクション)。

よくある失敗:外部から受け取ったファイルやURLを、そのままAIに読ませて処理させる。

今日できる対策外部から来た内容をAIに自動処理させる仕組みを、確認なしに作らない。 詳しくはプロンプトインジェクションとはへ。

個人利用と業務利用で優先度が違う

リスク個人利用での重さ業務利用での重さ
誤情報
情報漏えい低〜中最高
著作権公開しなければ低(商用なら特に)
悪用(受け手として)
偏り(人事・評価で使う場合)
依存
セキュリティ(仕組みを作る場合)

個人で使う分には、誤情報と詐欺への警戒がほぼすべてです。 組織で使う段階になると、情報漏えいと著作権が一気に前に出ます。

組織で使うなら、公的な枠組みがある

社内ルールをゼロから作る必要はありません。総務省と経済産業省が「AI事業者ガイドライン」を公開しており、第1.2版(令和8年=2026年3月31日公表)には、別添としてチェックリストとワークシートが用意されています。

これは法的拘束力を持つ規制ではなく、事業者が自主的に活用する前提の文書です。「何を決めていないか」を洗い出す道具として使うのが実用的です。

使わないという判断にもコストがある

最後に、公平のために書いておきます。

リスクを挙げると「使わないほうが安全」に見えますが、それも1つの選択であって、無コストではありません。 使わない期間に積み上がらないのは、慣れと、自分の業務での勘所です。

現実的な着地は、「リスクの低い作業から使い始める」ことです。 自分だけで完結する作業(メモの要約、下書きづくり)は、失敗しても影響が自分の中で収まります。そこから範囲を広げていけば、大きな事故は避けられます。

倫理面のより広い論点は生成AIの倫理とはで扱っています。

FAQ

Q. リスクがあるなら、使わないほうが安全ですか? A. 使い方によります。機密を入力しない、出力を人が確認する、数値は裏を取る——この3つを守れば、多くのリスクは大きく下がります。自分だけで完結する作業から始めるのが安全な入り方です。

Q. 会社で使うとき、いちばん気をつけることは何ですか? A. 情報漏えいです。顧客情報・個人情報・未公開情報を入力しないこと、所属先のルールに従うことが最優先になります。

Q. 個人利用でも著作権は関係ありますか? A. 個人で楽しむ範囲と、公開・販売する場合ではリスクの大きさが異なります。公開や商用利用の際は特に確認が必要です。個別の判断は専門家にご相談ください。

Q. 入力した内容は学習に使われますか? A. サービスやプラン、契約によって扱いが異なり、設定で変更できる場合もあります。業務で使う前に、各社の公式情報を確認してください。

Q. AIの答えを、どこまで信じていいですか? A. 文章の構成や表現は、そのまま使える場面が多くあります。一方、制度・数値・固有名詞は必ず確認してください。この線引きを持つだけで、実害はかなり減らせます。

まとめ

  • リスクは**受ける側(誤情報・偏り・依存)と与える側(漏えい・著作権・悪用・セキュリティ)**に分かれる
  • 個人利用の最重要は誤情報、業務利用の最重要は情報漏えい
  • 対策の柱は「機密を入力しない」「出力を人が確認する」「制度・数値・固有名詞は裏を取る
  • 組織で使うなら、AI事業者ガイドラインのチェックリストが叩き台になる
  • 使わない判断にもコストがある。影響が自分の中で収まる作業から始める

次に読む:ハルシネーションとは?生成AIと著作権管理職・経営者のAI活用


※本記事は一般的な論点の整理であり、個別の法的判断を示すものではありません。著作権や個人情報の取り扱いについては、必要に応じて専門家にご相談ください。データの取り扱いは各サービスの公式情報をご確認ください。

出典

最終更新:2026年7月25日/fondantAI編集部