ディープフェイクとは、AIを使って作られた、本物そっくりの偽の画像・動画・音声のことです。 かつては「よく見れば不自然さで見破れる」と言われていましたが、その前提はもう当てにできません。

だからこの記事は、見破り方の説明にはあまり紙幅を割きません。代わりに、見破れなくても被害に遭わないための手順を扱います。

この記事の要点

  • 見破る」から「確認する」へ。技術で見分ける勝負は分が悪い
  • 金銭が絡む連絡は、必ず別の経路でかけ直す。声も映像も本人確認の根拠にならない
  • 家族・職場で事前に取り決めを作っておくのがいちばん効く

ディープフェイクとは

「ディープラーニング(deep learning)」と「フェイク(fake)」を合わせた言葉です。AIが大量の画像や音声を学習することで、実在の人物の顔や声を精巧に再現できるようになりました。

技術そのものは映像制作や吹き替えなどにも使われますが、悪用されると深刻な被害につながります。

何が起きているか

  • なりすまし詐欺:上司や家族の声を装って、金銭の送付や情報の提供を求める
  • 偽の発言・映像:実際には言っていないことを、言ったように見せる
  • 誤情報の拡散:作られた映像がSNSで広まり、混乱を招く
  • 本人の同意なく作られる映像:名誉や尊厳を傷つける形での悪用

共通するのは、「本人らしさ」が信用の根拠にならなくなったという点です。

「見破る」より「確認する」

以前は、まばたきの不自然さ、口の動きと音のずれ、光の当たり方といった手がかりが有効でした。いまも参考にはなりますが、技術の進歩でこうした痕跡は減っています。

見分ける勝負を続けるのは、分が悪くなる一方です。 発想を変えて、「本物かどうかを見抜く」のではなく「別の方法で確かめる」に切り替えてください。

確認の手順

  1. その連絡が来た経路とは別の経路で連絡する:電話が来たなら、こちらから知っている番号にかけ直す。メッセージなら、直接会うか電話する
  2. 相手にしか答えられないことを聞く:直近の共通の出来事など、公開されていない情報
  3. 急かされたら、いったん止める急がせるのは、確認させないためです
  4. 金銭・振込・機密情報が絡むなら、必ず止まる:これが最後の砦です

「かけ直す」だけで、大半の被害は防げます。 相手の番号にかけ直せば、なりすましは成立しません。

事前に決めておくこと

被害の瞬間に判断するのは難しいので、平時に決めておくのが有効です。

家族で

  • 合言葉を1つ決めておく:緊急の金銭の相談があったら、必ず合言葉を確認する
  • 「まずかけ直す」を家族の約束にする:本人の声でも、必ずかけ直す
  • 決めたことを、離れて暮らす家族にも共有する

職場で

  • 送金・支払いの承認手順を決めておく:役員からの直接指示でも、手順を飛ばさないことをルール化する
  • 音声・映像を本人確認の根拠にしない:「社長の声だったから」は理由にならない、と共有しておく
  • 緊急を装った依頼は、必ず別経路で確認する

ルールがあれば、断ることが「疑うこと」ではなくなります。 これが職場では特に大事です。

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素材にされないための予防

自分の顔や声が悪用される側になることもあります。完全には防げませんが、減らすことはできます。

  • 公開範囲を見直す:SNSの写真・動画の公開設定を確認する
  • 長い音声を公開しすぎない:長時間の音声は、再現の材料になりやすくなります
  • 顔がはっきり写った写真の量に注意する:特に子どもの写真は、公開範囲を絞る

プライバシー全般の考え方はAIと個人情報・プライバシーで扱っています。

見かけたときの振る舞い

疑わしい動画や画像を見かけたときは、次の3つを守ってください。

  • すぐ拡散しない:善意の注意喚起でも、偽物を広げる結果になり得ます
  • 発信元を確認する:公式の発表や、複数の報道と照らします
  • センセーショナルなものほど疑う:感情を強く動かす内容ほど、拡散を狙って作られている可能性があります

AIが誤った内容を出す問題全般はハルシネーションとは?、実際の失敗例はAIやらかし集で扱っています。

被害に遭ったら・不安なとき

  • 緊急の場合は110番
  • 緊急でない相談は、警察相談専用電話「#9110」:生活の安全に関する相談を受け付ける全国統一の番号で、かけた地域を管轄する警察本部の総合相談室につながります。受付は平日8:30〜17:15が基本ですが、都道府県警察により異なり、土日祝や時間外は当直または音声案内での対応となる場合があります
  • 証拠を残す:やり取りの画面、日時、相手の情報を保存しておきます
  • 法的な判断が必要な場合は専門家へ:作成・拡散の違法性は目的と内容によって変わります

FAQ

Q. 個人でも被害に遭いますか? A. あり得ます。SNSに公開した写真や音声が素材にされることがあります。また、家族の声を装った詐欺の受け手として巻き込まれる可能性のほうが、より身近です。

Q. 見破る技術はないのですか? A. 検出の研究は進んでいますが、作る側との追いかけっこになっています。技術に頼りきらず、確認の手順を持つほうが確実です。

Q. 本人の声だったのに偽物、ということがありますか? A. あり得ます。声は本人確認の根拠になりません。 金銭や機密が絡む連絡は、必ず別の経路でかけ直してください。

Q. 作ること自体が違法ですか? A. 目的や内容によります。他人を害する利用(詐欺、名誉を傷つける行為など)は法的責任を問われ得ます。個別の判断は専門家や公的機関にご相談ください。

Q. 家族に何を伝えておけばいいですか? A. 「声だけでは信じない、必ずかけ直す」の1つで十分です。合言葉を決めておくと、さらに確実になります。

まとめ

  • ディープフェイクはAI製の本物そっくりな偽の画像・動画・音声
  • 見分ける勝負は分が悪い。「見破る」から「確認する」へ切り替える
  • 金銭が絡む連絡は、必ず別経路でかけ直す。声も映像も本人確認にならない
  • 平時に取り決めを作る(家族の合言葉、職場の承認手順)
  • 見かけてもすぐ拡散しない。緊急でない相談は警察相談専用電話「#9110」へ

次に読む:AIやらかし集ハルシネーションとは?生成AIのリスクと課題は?知っておくべき7つと使う側の心得画像生成AIの商用利用の注意点


※法的な判断が必要な場合は、専門家や公的機関にご相談ください。相談窓口の受付時間は都道府県により異なります。緊急の場合は110番へ。

出典

  • 警察庁「各種相談等がある方に」(2026年7月25日確認)

最終更新:2026年7月25日/fondantAI編集部