販売の現場では、会社が導入する前に、現場が個人で使い始めています。

総務省の白書データによると、営業・販売で「従業員が個人作業の効率化で活用している」は27.2%。全業務類型のなかで、議事録・メール作成補助(35.2%)に次いで2番目に高い数字です。

そして未導入は20.5%。こちらも議事録(17.5%)に次いで2番目に低い。販売は、すでに動いている業務です。

この記事の要点

  • 営業・販売の未導入は20.5%(全類型で2番目に低い)
  • 個人作業の効率化での活用が27.2%=現場が先行
  • 効果実感は37.5%。接客そのものは変わっていない

数字で見る現在地

総務省「令和8年版 情報通信白書」データ集より、営業・販売の状況です。

状態割合
業務プロセスがAI中心に変更されている9.5%
部署内の特定業務で活用している22.9%
従業員が個人作業の効率化で活用している27.2%
未導入20.5%
わからない14.9%
社内に該当業務はない5.0%

注目したいのは、3行目と4行目の関係です。

「部署内の特定業務で活用」(22.9%)より、「従業員が個人作業の効率化で活用」(27.2%)のほうが多い。組織として入れる前に、個人が使い始めている構図です。

効果を感じている割合は37.5%。 マーケティング・広報36.6%、カスタマーサポート33.8%と近い水準で、議事録・メール作成補助の72.3%とは差があります。

⚠️ 白書の業務類型は「営業・販売」であり、販売職・小売業だけを取り出した統計ではありません。以下は、この数値を手がかりに店舗業務を整理したものです。

接客と裏方を分ける

「販売の仕事がAIに置き換わるか」と聞かれたとき、答えは業務によって違います。

内容AIの入り方
接客声のかけ方、提案、その場の判断、クレームの一次対応ほとんど変わらない
裏方発注、在庫、シフト、POP、商品説明文、報告すでに入っている

時間で見ると、裏方の比率は決して小さくありません。 発注の判断、在庫の確認、シフトの調整、販促物の作成、本部への報告——これらは店を閉めた後や、客足の少ない時間に行われています。

AIが効いているのは、この部分です。

裏方で実際に変わること

業務何をさせるか
商品説明文・POP特徴を渡して文案を複数出させる。季節・客層に合わせて書き分ける
発注の下調べ過去の売れ方の傾向を整理させる(判断は人
シフトの調整案条件を渡してたたき台を作らせる(確定は人
本部への報告メモから定型の報告書に整形させる
クレームの一次返信文面のたたき台と、書いてはいけない表現の点検
新人への説明資料手順書のたたき台を作らせる

共通するのは「文章にする作業」です。 頭の中にあることを、伝わる形にする部分でAIが効きます。

逆に、判断はAIに渡せません。 何をいくつ仕入れるか、誰をどの時間に入れるか——これは店の事情と人の事情を知っている人にしか決められません。

接客が変わらない理由

効果を感じる割合が37.5%にとどまっているのは、接客そのものが対象外だからだと考えられます。

接客で起きていることは、次のような判断の連続です。

  • この客に声をかけるか、かけないか
  • 迷っている理由が、値段なのか、サイズなのか、用途なのか
  • 一度断られた後に、もう一度出るかどうか
  • クレームの相手が、謝罪を求めているのか、交換を求めているのか

これらは、その場の空気と表情から読み取る作業です。 事前に文章化できないため、AIに渡す形になりません。

🔍 編集部の本音 「接客はAIに置き換わらない」という話は、慰めではなく数字にも表れていると思います。ただし、変わらないから安心という話でもありません。 裏方が短縮された分、接客に使える時間が増えるという変化が起きます。そのとき「時間が空いた」で終わる人と、「その時間で何をするか」を決められる人の差が出ます。

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個人で使い始めた状態のリスク

導入が進んでいる業務ほど、この問題が先に来ます。

リスク具体的に
顧客情報の入力会員名、購入履歴、クレーム内容を無断で入力してしまう
店舗ごとのばらつき使っている人と使っていない人で、業務のやり方が分かれる
属人化その人が異動すると、やり方が消える
表記の不統一商品説明文の書き方が、書いた人によって変わる

対策は、禁止することではありません。

  • 入力してはいけない情報を決める(顧客名・会員番号・クレームの具体的内容)
  • うまくいった指示文を共有する(個人のノウハウを店の資産にする)
  • 表記のルールを1枚にまとめる

すでに現場が使っている以上、ルールを作るほうが現実的です。 各社の学習設定は社内情報を学習させない設定で扱っています。

販売職として何を身につけるか

1つ目は、頭の中にある基準を言葉にすることです。

「この時期はこれが売れる」「この客層にはこの提案」——これを文章にできる人だけが、AIに渡せます。 渡せれば、新人の教育にも、他店への展開にも使えます。

2つ目は、裏方で浮いた時間の使い道を決めることです。

3つ目は、AIの出力を疑うことです。 商品説明文に事実でない特徴が混じることがあります。数値・成分・産地は、必ず元の資料と突き合わせてください(ハルシネーションとは?)。

学び方の順序は生成AI独学ロードマップ、他の職種での変化は職種別・AIで変わる仕事まとめにまとめています。

FAQ

Q. 販売の仕事はAIでなくなりますか?

A. 接客そのものは、数字を見る限り変わっていません。 営業・販売で効果を感じている割合は37.5%で、議事録・メール作成補助の72.3%とは差があります。変わっているのは裏方(商品説明文、報告、シフト案の作成など)です。

Q. なぜ販売は導入が進んでいるのですか?

A. 未導入20.5%は全業務類型で2番目に低い水準です。 ただし内訳を見ると「従業員が個人作業の効率化で活用している」が27.2%と高く、組織的な導入というより個人の使用が先行している構図が読み取れます。

Q. 店舗で使うとき、何に気をつければいいですか?

A. 顧客情報を入力しないことです。 会員名・購入履歴・クレームの具体的内容は、社内ルールの確認が先になります。商品説明文の作成やシフト案のたたき台なら、個人情報を入れずに使えます。

Q. 何から始めればいいですか?

A. 商品説明文やPOPの文案からをおすすめします。 失敗しても取り返せて、結果の良し悪しが自分で判断できるためです。

Q. 発注や在庫管理は任せられますか?

A. 下調べは任せられますが、判断は残ります。 何をいくつ仕入れるかは、店の事情(客層、立地、催事、天候)を知っている人が決める領域です。

Q. 接客のスキルは今後も評価されますか?

A. 裏方が短縮されるほど、接客に使える時間が増えます。 その時間で何をするかが問われるようになります。加えて、自分の接客の判断基準を言葉にできる人は、教育や他店展開でも価値が出ます。

まとめ

  • 営業・販売の未導入は20.5%(全業務類型で2番目に低い)
  • 「従業員が個人作業の効率化で活用」が27.2%。 会社の導入より現場が先行している
  • 効果実感は37.5%。 接客そのものは変わっていない
  • 変わっているのは裏方(商品説明文・POP・報告・シフト案・発注の下調べ)
  • 判断は残る。 何をいくつ仕入れるか、誰を入れるかは人が決める
  • 現場が先に使っている以上、禁止でなくルール作り(入力しない情報の線引き、指示文の共有)

営業職としての変化は営業職の仕事はAIでどう変わる?、顧客対応の窓口業務はカスタマーサポートの仕事はAIでどう変わる?、体系的に学ぶ場合の選び方は生成AIスクールおすすめ比較にまとめています。