AI職のポートフォリオで見られているのは、完成品の出来ではありません。 そこに至るまでの判断です。

理由ははっきりしています。AIを使えば、それらしい成果物は誰でも短時間で作れるようになりました。 作れること自体が差にならない以上、評価されるのは「なぜその設計にしたか」「どこで諦めたか」のほうになります。

この記事の要点

  • 見せるのは成果物より判断の過程
  • コードが書けなくても作れる(4つの形)
  • 業務データはそのまま載せられない

何を見せるか

次の5点が入っていれば、規模は小さくて構いません。

項目中身
①解こうとした問題誰の、どんな困りごとか。自分が実際に困っていたものが最も強い
②選んだ方法と、選ばなかった方法なぜそれにしたか。他に何を検討したか
③うまくいかなかった点どこで詰まり、どう対処したか
④確かめ方出力が正しいことを、どう検証したか
⑤結果と、今なら変えること何がどう変わったか。今の目で見た改善点

③と④が入っていないポートフォリオは、ほぼ読み飛ばされます。 動くものを見せるだけなら、誰でもできるからです。

コードが書けなくても作れる

「ポートフォリオ=GitHubにコードを置くこと」ではありません。 使う側・支える側の職種なら、次の形が成立します。

①業務の再設計

今ある業務のどこにAIを入れ、どこを人に残したかを、工程図と理由で示す形です。

  • 変更前と変更後の工程
  • AIに任せなかった工程と、その理由
  • かかる時間の変化(概算で可)

「入れた場所」より「入れなかった場所の理由」のほうが読まれます。

②プロンプト設計と検証の記録

同じ作業に対して、指示の出し方を変えて結果を比べた記録です。

  • 最初の指示と、その出力の問題点
  • どう直したか(なぜそう直したか
  • 最終形と、それでも残る限界

改善の過程がそのまま思考の記録になります。

③比較検証

複数のツールに同じ課題を与えて、結果を比べたものです。

  • 評価の基準を先に決めていること(後から決めると恣意的になります)
  • 得意・不得意の切り分け
  • どの場面ではどちらを使うかという結論

④社内展開の記録

自分以外の人に使ってもらった記録は、実務性が高く評価されます。

  • どう説明したか、どこでつまずかれたか
  • ルールとして何を決めたか
  • 定着したか、しなかったか(しなかった場合も価値があります

載せてはいけないもの

ここを間違えると、内容の良し悪し以前の問題になります。

載せられないもの理由
業務で扱ったデータ顧客情報、取引先情報、売上明細など
社内資料そのもの会議資料、社内規程、システムの画面
在職中の案件の詳細秘密保持の対象になる場合があります
他人が作ったものを自作として論外です

「数字を伏せれば大丈夫」とは限りません。 業務内容そのものが特定できる場合、伏せ字にしても対象になることがあります。

秘密保持の範囲は、雇用契約・就業規則・個別の契約によって変わります。 迷ったら、公開前に確認してください。

代替:架空データで同じ構造を再現する

実務でやったことを見せたいなら、構造だけを移してください。

  1. 実データを自分で作った架空データに置き換える(列の構成と規模感だけ合わせる)
  2. 業種や社名は一般化する(「小売業の店舗別売上」など)
  3. 「実務で近い課題を扱った経験があり、ここでは架空データで再現しています」と明記する

3を書くことが重要です。 隠すのではなく、置き換えたことを開示する。これは誠実さの証明にもなります。

なお、業務情報をAIに入力する時点での注意は社内情報を学習させない設定で扱っています。

🔍 編集部の本音 ポートフォリオで最も弱いのは、「動くものを作りました」で終わっているものです。今は誰でも動くものが作れます。読み手が知りたいのは、あなたがどこで迷って、何を捨てたか。 うまくいかなかった話を1つ入れるだけで、印象は変わります。作り込むより、書き足すほうが効きます。

置き場所

凝る必要はありません。 読める形になっていれば十分です。

置き場所向いている場合
文書共有サービス(Googleドキュメント等)最も手軽。非エンジニアはここで十分
ブログ・note検証の過程を記事として残す場合
GitHubコード・スクリプトを含む場合
スライド業務の再設計を工程図で見せる場合

共有リンクの権限だけは必ず確認してください。 「リンクを知っている全員が閲覧可」になっているか、逆に社外秘のフォルダに入ったままになっていないか。

PR・おすすめstrategy career自分らしく働けるエンジニア転職エージェント。公式サイトを見る

1本目の作り方

題材選びで、ほとんど決まります。

ステップ1:自分が実際に困っている作業を選ぶ

「作品のための題材」を探すと、語れないものができます。 毎週やっている面倒な作業、時間がかかっている調べ物——自分が当事者である課題を選んでください。深掘りされたときに答えられます。

ステップ2:先に「評価の基準」を決める

作る前に、何をもって成功とするかを書いておきます。

  • 時間が何割減れば成功か
  • どの程度の精度なら実用か
  • どこまでできなかったら、この方法は不採用か

3つ目を先に決めておくと、失敗も成果になります。

ステップ3:作る。詰まった箇所を記録する

詰まった瞬間にメモを取ってください。 後から思い出そうとすると、いちばん価値のある部分が消えます。

ステップ4:5点セットに整理する

冒頭の①〜⑤の形にまとめます。分量はA4で2〜3枚程度で足ります。 長さより、判断が書かれているかどうかです。

職務経歴書・面接との関係

3つは、同じ材料の見せ方違いです。

役割
職務経歴書何をしてきたかの一覧(書き方
ポートフォリオそのうち1件を、判断まで含めて深く
面接ポートフォリオの内容を、口頭で掘られる(聞かれること

ポートフォリオが1本あると、面接の準備がほぼ終わります。 面接で問われる「選定理由・限界・検証・止めた判断」は、ポートフォリオに書いた内容そのものだからです。

FAQ

Q. コードが書けなくてもポートフォリオは作れますか?

A. 作れます。 業務の再設計、プロンプト設計と検証の記録、複数ツールの比較検証、社内展開の記録——いずれも成果物として成立します。使う側・支える側の職種では、こちらのほうが実務性が伝わります。

Q. 仕事で作ったものを載せてもいいですか?

A. そのままは載せられない場合があります。 業務データ・社内資料・案件の詳細は秘密保持の対象になりえます。範囲は雇用契約や就業規則によって変わるため、公開前に確認してください。架空データで同じ構造を再現し、その旨を明記する方法が現実的です。

Q. どのくらいの規模が必要ですか?

A. 規模より、判断が書かれているかどうかです。 A4で2〜3枚、扱う題材は1件で構いません。大きな成果物を薄く説明するより、小さな題材を深く語れるほうが評価されます。

Q. 失敗した取り組みを載せてもいいですか?

A. むしろ載せてください。 評価の基準を先に決めていて、その基準で不採用と判断した——という記録は、判断力の証明になります。

Q. AIに作らせたものを載せてもいいですか?

A. AIを使うこと自体は問題ありません。 ただし、どこをAIにやらせ、どこを自分が判断したかを書いてください。 そこが書かれていないと、深掘りされた時点で答えられなくなります。

Q. 何本用意すればいいですか?

A. まず1本を、語れる深さで作ってください。 本数を増やすより、1本を掘るほうが面接で機能します。

まとめ

  • 見せるのは成果物より判断の過程。 ①問題 ②選んだ/選ばなかった方法 ③詰まった点 ④確かめ方 ⑤今なら変えること
  • コードが書けなくても作れる。 業務の再設計/プロンプト設計と検証/比較検証/社内展開の記録
  • 業務データ・社内資料はそのまま載せない。 架空データで構造を再現し、そう書く
  • 題材は「自分が実際に困っている作業」から選ぶ。 深掘りに耐えるのはこれだけ
  • 評価の基準を作る前に決める。 決めておけば、うまくいかなかった場合も成果になる
  • 1本あれば、面接の準備もほぼ終わる

学んだことを実務に接続する手順は学んだAIスキルを仕事で使う方法、書類全般の書き方はAIで職務経歴書・履歴書を作る方法、職種ごとの違いはAI業界の職種地図にまとめています。