企画書が通らない原因は、文章力ではありません。決裁者が判断できる材料が揃っていないことです。
だからAIに「きれいな企画書を書いて」と頼んでも通りません。足りないのは表現でなく、判断材料だからです。
この記事の要点
- 企画書は説明でなく、判断のための材料
- リスクを先に書く(触れていないと検討が浅く見える)
- 正確な数字がなくても、規模感は書ける
⚠️ この記事は社内の企画書・稟議が対象です。社外向けの提案書はAIで見積書・提案書のたたき台を作る方法、発表用のスライドはAIでプレゼン資料を作る方法で扱っています。
決裁者が判断するために必要なもの
企画書に必要なのは、この6つです。
| 項目 | 決裁者が知りたいこと |
|---|---|
| ①解決する課題 | いま何が問題なのか |
| ②放置した場合 | やらないとどうなるか |
| ③やること | 具体的に何をするのか |
| ④かかるもの | 費用・人・期間 |
| ⑤リスクと対処 | 失敗したときどうなるか |
| ⑥判断のタイミング | いつまでに決める必要があるか |
⑤が抜けている企画書が最も多くなります。
リスクに触れていない企画書は、「検討が浅い」と判断されます。 決裁者は必ずリスクを考えるため、書かれていなければ質問されます。先に書いておくほうが、検討済みだと伝わります。
手順
ステップ1:課題から書き始める
以下のメモから、企画書の「解決する課題」の部分を作ってください。
■メモ:[自分が問題だと感じていること]
■読み手:[決裁者の立場]
■条件:
- 課題を1文で言い切ってください
- 「なぜそれが問題か」を、**会社にとっての影響**で書いてください
- 解決策はまだ書かないでください
- メモにない事実を足さないでください
「会社にとっての影響」が要点です。
「作業が面倒」は個人の問題ですが、「月40時間が定型作業に使われている」は会社の問題になります。 同じことでも、後者でないと決裁の対象になりません。
ステップ2:放置した場合を書く
ここが弱いと、「今やる理由」がなくなります。
- このまま続けると、どうなるか
- 時間が経つほど不利になる理由(あれば)
- 他社・他部署の状況(分かる範囲で)
「やったほうがいい」と「やらないとまずい」では、通り方が違います。
ステップ3:数字を作る
正確な数値がなくても、規模感は書けます。
| 正確な数字がない場合 | 代わりに書けること |
|---|---|
| コスト削減額が不明 | 作業の頻度 × 人数 × 所要時間 |
| 効果が不明 | 同種の取り組みでの一般的な範囲(出典を明記) |
| 売上への影響が不明 | 対象となる件数・顧客数 |
「月に何回、何人が、何分やっているか」は、必ず言えるはずです。
以下の作業について、規模感を示す数字を整理してください。
■作業:[ ]
■分かっていること:[頻度、人数、所要時間など]
■条件:
- **推測で数値を作らないでください**
- 分かっていない項目は「未計測」と書いてください
- 計算過程を示してください
「推測で数値を作らない」を必ず入れてください。 入れないと、それらしい効果の数値が入ります(ハルシネーションとは?)。企画書に根拠のない数字を書くと、そこを突かれた時点で信頼を失います。
ステップ4:リスクを書かせる
以下の企画について、想定されるリスクを挙げてください。
■企画:[ ]
■条件:
- 実現しないリスク、実現しても効果が出ないリスク、副作用の3種類に分けてください
- それぞれに、**軽減する方法**をセットで
- 「リスクはありません」とは書かないでください
3種類に分けさせるのが要点です。 リスクを1つの箱で考えると、漏れます。
軽減策とセットで書くことで、「リスクを認識したうえで進める」という形になります。
ステップ5:反論を想定する
この企画に**反対する立場**から、想定される質問と反論を10個挙げてください。
- 厳しい順に
- 「答えに詰まりやすいもの」を優先して
- それぞれ、どんな材料があれば答えられるかも
[企画書を貼る]
返ってきた質問のうち、答えられないものが、企画書に足りない部分です。
立場を変えて複数回やると、より網羅できます(費用を見る立場、現場で回す立場、リスクを見る立場)。
🔍 編集部の本音 企画書でAIを使うとき、いちばん危ないのは**「それらしい効果の数値」を書かせてしまうこと**だと思います。「導入により生産性が30%向上」——根拠を聞かれて答えられなければ、企画そのものの信頼が落ちます。数字がないなら、ないまま「未計測」と書くほうが安全です。 決裁者が見ているのは、数字の大きさより、その数字をどう扱っているかです。
決裁者で厚みを変える
誰が決裁するかで、見る場所が違います。
| 決裁者 | 特に見る箇所 |
|---|---|
| 経営・財務 | 費用対効果、投資回収、他の案との比較 |
| 現場責任者 | 現場の負荷、既存業務への影響、移行の手間 |
| 情報システム・法務 | セキュリティ、契約、コンプライアンス |
| 直属の上長 | 実現可能性、あなたの工数 |
複数人が関わる場合、それぞれの関心に1段落ずつ割いてください。
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「駄目でした」で終わらせないでください。
- どの部分が判断できなかったのか
- 何があれば判断できたのか
- 時期の問題か、内容の問題か
3番目が重要です。 「今期は予算がない」なら、内容の問題ではありません。次期に出し直せます。
AIに任せられないこと
| 内容 | 理由 |
|---|---|
| 課題の設定 | 社内の状況を知らない |
| 数字の根拠 | 推測で作られる |
| 社内の力関係の読み | 誰が反対しそうかは分からない |
| タイミングの判断 | 予算期、組織改編、他の案件との関係 |
| 最終的な意思決定 | 責任を負う主体が必要 |
3番目と4番目は、企画が通るかどうかを実際に左右する部分です。 内容が良くても、時期が悪ければ通りません。
FAQ
Q. 企画書をAIに丸ごと書かせられますか?
A. 形式は作れますが、通る企画書にはなりません。 課題の設定、数字の根拠、社内の状況——これらはAIが知らない情報です。足りないのは表現でなく判断材料です。
Q. 効果の数字がありません。
A. 推測で作らないでください。 正確な数値がなくても、「月に何回、何人が、何分」という規模感は書けます。分かっていない項目は「未計測」と明記するほうが安全です。
Q. リスクは書くべきですか?
A. 書いてください。 触れていない企画書は「検討が浅い」と判断されます。実現しないリスク・効果が出ないリスク・副作用の3種類に分け、軽減策とセットで書いてください。
Q. 反論が想定できません。
A. 反対の立場を明示してAIに出させてください。 費用を見る立場、現場で回す立場、リスクを見る立場——立場を変えて複数回やると網羅できます。答えられない質問が、企画書に足りない部分です。
Q. 企画書が長くなります。
A. 決裁者が判断に使う6項目に絞ってください。 課題/放置した場合/やること/かかるもの/リスクと対処/判断のタイミング。それ以外は補足資料に回せます。
Q. 通らなかった場合はどうすればいいですか?
A. 「どの部分が判断できなかったか」「何があれば判断できたか」「時期の問題か内容の問題か」を聞いてください。 時期の問題なら、次期に出し直せます。
まとめ
- 企画書は説明でなく、決裁者が判断するための材料
- 必要なのは課題/放置した場合/やること/かかるもの/リスクと対処/判断のタイミングの6項目
- リスクを先に書く。 触れていないと検討が浅く見える
- 推測で数値を作らない。 「未計測」と書くほうが安全
- 反対の立場から想定質問を出させる。 答えられないものが足りない部分
- 決裁者によって厚く書く箇所を変える
- 課題設定・数字の根拠・タイミングの判断はAIに任せられない
資料作成一般の手順はAIで資料作成する方法、企画職としての変化は企画職の仕事はAIでどう変わる?、指示の出し方はプロンプトの基本にまとめています。
