見積書と提案書は、性質がまったく違う書類です。
見積書は金額と条件の書類で、AIに任せられるのは体裁と抜けの確認だけです。提案書は文章の書類なので、構成から任せられます。
この区別をせずに「見積・提案をAIで」と扱うと、金額の部分で事故が起きます。
この記事の要点
- 金額はAIに決めさせない(相場が創作される)
- 提案書は相手の課題の言語化から始める
- 見積書は抜けの点検に使う
見積書:金額は自分で決める
AIに「この作業の相場はいくらですか」と聞かないでください。
それらしい単価が返ってきますが、根拠がありません。 学習した文章の中にあった数字か、もっともらしく作られた数字です(ハルシネーションとは?)。
そして見積金額は、相場でなく次で決まります。
- 自社の原価と工数
- 過去の類似案件の実績
- この案件固有の条件(納期、修正回数、体制)
- 相手との関係と、取りたい度合い
どれもAIが知らない情報です。
AIに任せられること
| 用途 | 内容 |
|---|---|
| 項目の抜けチェック | 一般的に含まれる項目のうち、書かれていないもの |
| 作業の分解 | 「〇〇一式」を工程に分ける(工数は自分で入れる) |
| 体裁の整え | 項目名の統一、並び順 |
| 注記の文案 | 「本見積に含まれないもの」の書き方 |
抜けの点検に使う
以下は見積書の案です。
一般的な見積書として、記載が漏れている可能性がある項目を挙げてください。
- 金額の妥当性については判断しないでください
- 相場の推測もしないでください
- 記載漏れの指摘だけしてください
[見積の項目を貼る]
「金額の妥当性は判断しない」を必ず入れてください。
抜けやすい項目
- 有効期限
- 消費税の扱い(内税・外税)
- 支払条件(締め日、支払日、分割の有無)
- 本見積に含まれない範囲
- 追加費用が発生する条件(修正回数、仕様変更)
- 納期の前提(相手からの支給物の期限など)
下2つが、後のトラブルを防ぎます。 「どこまでが見積の範囲か」を書いておくと、追加作業の交渉が成立します。
⚠️ 見積書・請求書の記載事項には、制度上の要件が関わる場合があります(登録番号の記載など)。自社の経理担当または税理士に確認してください。 この記事では制度の内容には立ち入りません。
提案書:自社の説明から始めない
AIに提案書を書かせると、ほぼ確実に自社紹介から始まります。
読み手が知りたいのは、そこではありません。
構成の順序
| 順 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 相手の課題(相手の言葉で書く) |
| 2 | その課題を放置するとどうなるか |
| 3 | 提案の内容(何をするか) |
| 4 | なぜそれで解決するか |
| 5 | 進め方・体制・スケジュール |
| 6 | 費用 |
| 7 | 自社が適している理由 |
7番目が最後です。 自社の実績は、提案の妥当性を裏付ける材料であって、提案の主役ではありません。
課題の言語化から始める
以下は、商談で聞いた相手の話のメモです。
提案書の冒頭に置く「相手の課題」を3案作ってください。
■条件:
- 相手が実際に使った言葉を優先してください
- メモにない課題を推測で足さないでください
- 1案あたり2文以内
- 解決策はまだ書かないでください
[商談メモを貼る]
「相手が実際に使った言葉を優先」が要点です。
課題の記述が相手の言葉と一致していると、「分かってくれている」と伝わります。 逆に、こちらの業界用語に翻訳してしまうと、他社にも出せる汎用の提案書に見えます。
提案の本体を書かせる
以下の内容で提案書の本体を作成してください。
■相手の課題:[上で確定したもの]
■提案内容:[自分で決めたもの]
■構成:課題 → 放置した場合 → 提案 → なぜ解決するか → 進め方 → 費用 → 当社が適している理由
■条件:
- 費用の金額は[ ]と書き、こちらで入れます
- 実績や数値は、渡した情報にあるものだけを使ってください
- 「業界随一」「最先端」などの誇大な表現を使わないでください
- 各セクションは400字以内
2番目の条件が重要です。 入れないと、実在しない導入実績や効果の数値が入ります。
🔍 編集部の本音 提案書をAIに書かせて、いちばん危ないのは**「それらしい効果の数値」が入ること**だと思います。「導入により平均30%の工数削減」——このような一文が、根拠なく自然に出てきます。提出前に、数値が入っている箇所を全部指差し確認する。 これだけで事故は防げます。
送る前の確認
見積書
- 金額が自分で計算したものか(AIが触っていないか)
- 税の扱いが明記されているか
- 有効期限があるか
- 範囲外が書かれているか
- 宛名・社名・敬称が正しいか
提案書
- 数値・実績が、実在するものだけか
- 誇大な表現が入っていないか
- 相手の課題が、相手の言葉で書かれているか
- 他社にもそのまま出せる内容になっていないか
- 費用の部分が[ ]のまま残っていないか
4番目は、AIで作った提案書に出やすい弱点です。 汎用的な文章になっていないか、相手固有の要素が入っているかを確認してください。
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- 社名・担当者名・金額は、伏せられるなら伏せてください(「A社」「担当者様」で構成は作れます)
- 相手から受け取った資料を入力する場合、機密の扱いを確認してください
- 社内にAI利用の規程がある場合は、それが優先します(社内情報を学習させない設定)
FAQ
Q. 見積の金額をAIに相談してもいいですか?
A. 相場の推測をさせないでください。 それらしい単価が返ってきますが、根拠がありません。金額は自社の原価・工数・過去実績・案件固有の条件から決めるものです。AIに任せられるのは、項目の抜けチェックと体裁です。
Q. 提案書はどこから書き始めればいいですか?
A. 相手の課題からです。 AIに書かせると自社紹介から始まりますが、読み手が知りたいのはそこではありません。自社が適している理由は最後に置いてください。
Q. 実績の数値が入ってしまいます。
A. プロンプトに**「実績や数値は、渡した情報にあるものだけを使ってください」**を入れてください。そのうえで、提出前に数値が入っている箇所をすべて確認してください。
Q. 汎用的な提案書になってしまいます。
A. 相手が実際に使った言葉を課題の記述に入れてください。 商談メモから抜き出して、こちらの業界用語に翻訳しないことが要点です。
Q. 顧客の資料をAIに読ませてもいいですか?
A. 機密の扱いを確認してから判断してください。 社名や金額を伏せても、提案書の構成は作れます。社内規程がある場合はそれが優先します。
Q. 見積書に何を書けば後で揉めませんか?
A. **「本見積に含まれない範囲」と「追加費用が発生する条件」**です。修正回数や仕様変更の扱いを先に書いておくと、追加作業の交渉が成立します。
まとめ
- 見積書と提案書は性質が違う。 前者は金額の書類、後者は文章の書類
- 金額はAIに決めさせない。 相場の推測は根拠がない
- 見積書でAIに任せるのは項目の抜けチェックと体裁
- 抜けやすいのは、有効期限・税の扱い・支払条件・範囲外・追加費用の条件
- 提案書は相手の課題から始める。 自社の説明は最後
- 課題は相手の言葉で書く。 翻訳すると汎用の提案書になる
- 提出前に数値が入っている箇所を全部確認する
商談メールの書き方はAIでビジネスメールを書く方法、資料全般の作り方はAIで資料を作成する方法、営業職としての変化は営業職の仕事はAIでどう変わる?にまとめています。
