経営企画の仕事に生成AIを入れても、効果を実感できている割合は業務類型のなかで最も低い——これが最新の調査結果です。 経営業務は20.1%。いちばん高い議事録・メール作成補助(72.3%)とは、3倍以上の開きがあります。

それでも「判断の助けになる」と期待されているのが、この領域の面白いところです。期待と実感がここまでずれる仕事は、そう多くありません。

この記事の要点

  • 経営業務の効果実感は20.1%で最下位(生成AIを活用している企業のうち)
  • 一方、「客観的で合理的な判断の助けになる」と考える人は約6割
  • 先に効くのは判断そのものではなく、判断の材料をそろえる作業

⚠️ 以下の数値は、総務省「令和8年版 情報通信白書」データ集(2026年8月12日確認)にもとづきます。調査は総務省(2026)「国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究」です。

データで見る:経営業務はいちばん効果を感じにくい

業務の種類ごとに、生成AIの活用効果を感じている割合です。この割合の対象は、その業務で生成AIを実際に活用している企業に限られます(未導入の企業は含みません)。

業務類型効果を感じる割合
議事録・メール作成補助72.3%
社内ヘルプデスク42.7%
製造・生産39.8%
研究・商品開発39.1%
営業・販売37.5%
マーケティング・広報36.6%
カスタマーサポート33.8%
経理・財務29.7%
法務28.8%
社内システム開発・運用26.3%
調達25.9%
人事23.5%
経営20.1%

経営が最下位です。 しかも、活用している企業に限ってこの数字だという点が重い。導入した結果として、効果を感じられていないということです。

活用状況のほうを見ると、経営業務では未導入が28.2%、そして**「わからない」が21.7%**あります。5社に1社は、自社の経営業務でAIが使われているかどうかすら把握していません。

参考までに、経理・財務は29.7%、営業・販売は37.5%です。それぞれの実務は経理の仕事はAIでどう変わる?営業の仕事はAIでどう変わる?にまとめています。

それでも期待は高い

同じ調査で、仕事におけるAIの役割についてこう聞いています。

項目そう思うどちらかといえばそう思う
単純・非効率的な仕事を生成AIに任せる23.2%40.9%
客観的で合理的な判断をするための助けになる15.5%45.6%
AI導入を前提とした新たなスキルを身につけなければならない21.5%42.2%

「客観的で合理的な判断をするための助けになる」は、合わせて約6割です。 期待は明確にある。

期待は6割、実感は2割。 このギャップが、経営企画という仕事の性質をよく表しています。

🔍 編集部の本音 このギャップは、AIの性能が足りないから起きているのではないと思います。経営の判断には、正解がないからです。 過去のデータから最もありそうな答えを出す仕組みと、前例のない選択をする仕事は、そもそも噛み合いません。ここを認めたうえで使い方を設計しないと、「入れたのに効かない」で終わります。

なぜ判断そのものには効きにくいのか

経営企画の中核業務を分解すると、理由が見えてきます。

業務AIとの相性なぜ
中期経営計画の策定低い過去の延長にない選択を含む。前提を決めるのは人
事業ポートフォリオの見直し低い撤退判断には社内政治と雇用が絡む
投資の意思決定低い責任の所在が動かせない
市場・競合の調査高い情報の収集と整理そのもの
予実の差異分析中〜高数字の要因分解は型がある
会議資料の作成高い構成と文章の作業
議事録・論点整理高い最も効果が出ている領域(72.3%)

上3つと下4つを分けられるかどうかが、すべてです。

経営企画の仕事は「判断」と呼ばれがちですが、実際に時間を食っているのは判断の手前の作業です。資料を集める、数字を並べる、論点を書き出す、会議の記録を残す。ここは議事録・メール作成補助と同じ性質で、効果が出ている領域です。

実例:AIに決めさせず、論点を出させる

白書には、キリンホールディングスのAI役員「CoreMate」が事例として掲載されています。図から読み取れる構成は、こうです。

  1. 経営層の会議中の発言をCoreMateが受け取る
  2. CoreMate内で議論・抽出を行う。その際、過去の議事録・関連資料・外部情報を参照する
  3. 抽出された論点や意見を経営陣に提示する
  4. その上で「経営層×AI役員の議論」が行われる

注目すべきは、AIが決めていないことです。 出しているのは論点と意見であり、決定は経営陣が議論して行う構成になっています。

そして参照先が「過去の議事録・関連資料・外部情報」である点も重要です。 汎用のAIに聞いているのではなく、自社の蓄積を読ませている。ここが効きどころだと考えられます。

社内情報をAIに渡すときの判断軸はAIに社内情報を入れていい?にまとめています。

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明日から切り出せる作業

判断を任せようとせず、判断の材料づくりから切り出してください。 効果が出ている領域と同じ性質のものから始めます。

1. 会議の論点抽出

会議の記録から、決まったこと・保留になったこと・誰が何を懸念したかを整理させます。効果実感が最も高い領域(72.3%)と同じ作業です。

2. 調査のたたき台づくり

市場調査や競合調査の初稿を作らせ、出典の確認は必ず人が行います。ここを省くと、もっともらしい誤りが資料に混ざります。

3. 数字の要因分解

予実差異について「考えられる要因を10個挙げて」と出させ、そこから人が絞り込みます。網羅は機械が得意で、取捨選択は人が得意です。

4. 反対意見の生成

自分の企画に対して**「この案の弱点を5つ挙げて」**と聞きます。CoreMateが論点を出す構成と同じ考え方です。説得材料ではなく、穴を先に見つけるために使います。

やらないほうがいいこと

  • 結論そのものを出させる(責任を負えない)
  • 社外に出す数字をそのまま使う(検証工程を必ず挟む)
  • 未公開の経営情報を、利用規約を確認せずに入力する

経営企画にいる人が備えるべきこと

AIを使えること自体は、もう差になりません。 調査でも「AI導入を前提とした新たなスキルを身につけなければならない」に約6割が同意しています。

経営企画で価値が残るのは、次のような部分です。

  • 問いを立てる力(AIは問いに答えるが、問いは作らない)
  • 前提を疑う力(データにない変化を織り込む)
  • 合意を作る力(撤退や再配分は、正しさだけでは通らない)
  • 検証を設計する力(AIの出力の誤りを、どこで拾うか決める)

このうち4つ目を職務経歴書に書ける人は多くありません。 書き方はAI人材の職務経歴書の書き方にまとめています。職種ごとの全体像はAI職種の地図職種別・AIで変わる仕事まとめをどうぞ。

FAQ

Q. 経営企画の仕事はAIに奪われますか? A. 少なくとも、いま最も置き換わっていない領域です。 経営業務は効果実感が20.1%で最下位、未導入28.2%。ただし「資料作成」「調査」「議事録」の部分は明確に効果が出ています。仕事全体ではなく、工程単位で変わっていくと考えるのが実態に近いはずです。

Q. 効果が出ないなら、導入しないほうがいいですか? A. そうは思いません。判断を任せようとすると効かない、というだけです。効果が出ている72.3%の領域(議事録・論点整理)は経営企画の仕事にも大量に含まれています。そこから始めれば、投資は十分に回収できると思います。

Q. どのツールを使えばいいですか? A. ツールの選定より先に、自社の資料をAIに読ませてよいかを決めるほうが重要です。CoreMateの例でも、価値の源泉は過去の議事録や関連資料といった自社の蓄積にありました。

Q. 中立の立場で「効果が低い」と言って大丈夫ですか? A. 公的な調査結果です。当サイトはAIツールもスクールも運営しておらず、提携の有無で評価を変えていません。効きにくい領域を先に伝えるほうが、結果的に投資の失敗を減らせます。

Q. 経営層を説得する材料になりますか? A. なります。「経営業務は効果実感が最も低い」というデータを先に示したうえで、効果が出ている工程から入るという提案は、いきなり全社導入を語るより通りやすいはずです。

Q. データの調査年はいつですか? A. 総務省「令和8年版 情報通信白書」データ集に掲載されたもので、調査は総務省(2026)「国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究」です。なお、同白書のHTML版は2026年8月12日時点で準備中です。

まとめ

  • 経営業務の効果実感は20.1%で業務類型の最下位(活用している企業のうち)
  • 未導入28.2%、「わからない」21.7%。実態の把握自体が進んでいない
  • 一方で「客観的で合理的な判断の助けになる」への同意は約6割。期待と実感が大きくずれている
  • 効きにくいのは判断そのもの。効くのは判断の材料をそろえる作業
  • キリンホールディングスのAI役員CoreMateは、AIに決めさせず論点と意見を提示させる構成
  • 始めるなら論点抽出・調査のたたき台・要因分解・反対意見の生成から

次に読む:職種別・AIで変わる仕事まとめAIに社内情報を入れていい?


※本記事は2026年8月12日時点の公表データにもとづく解説です。特定の企業の取り組みは白書掲載事例として引用したもので、評価・推奨を行うものではありません。

出典

最終更新:2026年8月12日/fondantAI編集部