広報・PRでAIを使うと、制作は速くなります。そして、人によるチェックが詰まります。
これは想像ではありません。総務省の白書に掲載された企業事例の図に、チェック工程だけが「ボトルネックとなるリスク」と明記されています。
この記事の要点
- マーケティング・広報の効果実感は36.6%(活用している企業のうち)
- 制作をAI化すると、人のチェックがボトルネックになる
- 詰まりを解くには企業固有のルールの学習が要る
⚠️ 以下は2026年8月12日に総務省「令和8年版 情報通信白書」データ集で確認した内容です。企業事例は白書掲載の図にもとづくもので、評価や推奨を行うものではありません。
まず数字を見る
生成AIの活用効果を感じている割合を、業務ごとに並べます。
| 業務 | 効果を感じる割合 |
|---|---|
| 議事録・メール作成補助 | 72.3% |
| 営業・販売 | 37.5% |
| マーケティング・広報 | 36.6% |
| カスタマーサポート | 33.8% |
| 法務 | 28.8% |
※その業務で生成AIを活用している企業のうちの割合です。
マーケティング・広報は36.6%。 突出して高い議事録・メール作成補助(72.3%)には及びませんが、業務類型のなかでは上位です。
文章を作る仕事なので、相性がいいのは想像どおりです。 問題はその先にあります。
制作を速くすると、チェックが詰まる
白書に掲載されたサイバーエージェントの事例図は、広告運用のプロセスを「BEFORE / AFTER」で示しています。
BEFORE の構成
| 工程 | 担い手 |
|---|---|
| 制作(自動生成・効果予測) | AI |
| チェック | 人の目 ← ボトルネックとなるリスク |
| 配信(パーソナライゼーション・ターゲティング) | AI |
| 解析(パフォーマンス最適化) | AI |
4工程のうち3つがAIで、チェックだけが人。 そこに「ボトルネックとなるリスク」という注記が付いています。
当たり前のことですが、見落とされます。 制作が10倍速くなれば、確認すべき量も10倍になる。確認する人の数は変わりません。
AFTER では、チェック工程にも「審査AI」が入ります。 図には「大量の広告の迅速な審査・意思決定が可能に」とあり、審査AIの説明として次の2点が挙げられています。
- AIによる高精度な自動審査
- 企業固有のルールを学習
2つ目が要点です。 チェックを自動化するには、その会社の基準がデータとして存在している必要があります。
🔍 編集部の本音 ここが広報・PRという仕事のいちばん面白い部分だと思います。「うちはこの表現は使わない」「この比較はしない」という判断は、たいてい人の頭の中にしかありません。 制作をAIに任せるほど、その暗黙のルールを言葉にする作業が重くなる。言語化できた会社から詰まりが解ける、という構図です。
工程を分けて考える
同じく白書掲載の電通の事例図では、AIエージェントが担う工程が7つに分けられています。
- Planning(企画)
- Research(調査)
- Creative(制作)
- Journey(体験設計)
- Execution(実行)
- Experience(体験)
- Measurement & Optimization(測定・最適化)
そしてその基盤として、汎用LLM/生成AIに加え、独自のAIモデルとデータ(顧客データ・生活者データ・業務データ)が置かれる構成になっています。
注目したいのは、汎用のAIだけで完結していない点です。 自社のデータと自社のモデルが土台にある。この構造は、規模を問わず参考になります。
**「AIを導入する」ではなく「どの工程に、どのデータで入れるか」**という考え方です。
なお、これらの図は広告運用・マーケティング領域のものです。広報・PRの業務そのものを描いた図ではありませんが、工程に分けて考える枠組みは共通して使えます。
広報・PRの工程に当てはめる
| 工程 | AIとの相性 | 注意 |
|---|---|---|
| 情報収集・調査 | 高い | 出典を必ず確認する |
| 企画のたたき台 | 高い | 案を広げる用途。決めるのは人 |
| プレスリリースの初稿 | 高い | 事実の正誤は人が確認 |
| SNS投稿文の量産 | 高い | ここでチェックが詰まる |
| 記事・資料の要約 | 高い | 効果が最も出ている領域 |
| メディアリストの整理 | 中 | 個人情報の扱いに注意 |
| 表現の可否判断 | 低い | 自社の基準が要る |
| 危機対応の判断 | 低い | 責任を負えない |
| 関係者との信頼構築 | 低い | 人の仕事 |
上5つと下3つの間に線があります。 素材を作るのはAI、出していいか決めるのは人です。
そして中間にあるのが「表現の可否判断」です。 ここは自社の基準を言語化できれば、部分的に自動化できる領域になります。
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1. NGの基準を書き出す
AIに任せる前に、自社の「使わない表現」を一覧にします。
- 使わない言い回し(誇大、断定、比較)
- 必ず入れる注記
- 承認が必要になる条件
これは審査AIの前提であると同時に、人が確認するときの速度も上げます。
2. チェックの工程を分ける
「全部を1人が見る」をやめてください。
| 見るもの | 誰が |
|---|---|
| 事実の正誤(数字・日付・固有名詞) | 担当者 |
| 表現の可否 | 基準に照らして機械的に |
| 出していい判断 | 責任者 |
混ぜると詰まります。 分けると、上2つは仕組みにできます。
3. 出典の確認を工程に埋め込む
AIが書いた文章に、根拠のない数字が混じることがあります。 「調査によると」で始まる一文は、必ず原典を開いてください。
引用や画像の権利は生成AIと著作権、社内情報を入れてよいかの判断はAIに社内情報を入れていい?にまとめています。
残る仕事は何か
制作が速くなるほど、価値が移る先ははっきりしています。
- 基準を作る(何を出さないか決める)
- 事実を確かめる(AIは確からしさを判断しない)
- 関係を保つ(記者や取引先との信頼)
- 危機に対応する(前例のない判断)
1つ目が新しく増えた仕事です。 これまで暗黙だったものを、再現できる形にするという作業が発生しています。
職種全体の見取り図は職種別・AIで変わる仕事まとめ、営業側の変化は営業の仕事はAIでどう変わる?、経営企画での使われ方は経営企画の仕事はAIでどう変わる?をどうぞ。
FAQ
Q. 広報の仕事はAIに奪われますか? A. 工程単位で置き換わります。 制作・調査・要約は明確に効きます。一方で表現の可否判断、危機対応、関係構築は残ります。効果実感は36.6%で、業務類型のなかでは上位です。
Q. なぜチェックが詰まるのですか? A. 制作だけがAI化されるからです。 白書掲載の事例図でも、制作・配信・解析がAIで、チェックのみ人の目とされ「ボトルネックとなるリスク」と注記されています。作る量が増えれば、確認する量も増えます。
Q. チェックも自動化できますか? A. 事例では「審査AI」により可能とされていますが、そこには**「企業固有のルールを学習」**という条件が付いています。自社の基準がデータとして存在していることが前提です。
Q. 小さな会社でも同じですか? A. 仕組みの規模は違っても、詰まる場所は同じだと思います。むしろ確認できる人が少ないぶん、基準を書き出しておく効果は大きいはずです。
Q. プレスリリースをAIに書かせてもいいですか? A. 初稿としては有効です。 ただし事実(数字・日付・固有名詞)の確認は必ず人が行ってください。 誤りが出た場合の責任は発信側にあります。
Q. 中立の立場で「AIを入れなくていい」と言うこともありますか? A. あります。チェック体制を整えないまま制作だけ速くすると、かえって混乱します。 当サイトは広告会社もAIツールも運営しておらず、提携の有無で評価を変えていません。順番としては、基準の言語化が先です。
まとめ
- マーケティング・広報の効果実感は36.6%(活用企業のうち)。業務類型では上位
- 事例図では制作・配信・解析がAI、チェックのみ人で「ボトルネックとなるリスク」と明記
- チェックの自動化には企業固有のルールの学習が前提
- 業務は7工程に分けて考えられる(企画・調査・制作・体験設計・実行・体験・測定)
- 基盤は汎用LLMだけでなく自社のデータと独自モデル
- 広報に残るのは基準を作る/事実を確かめる/関係を保つ/危機に対応する
次に読む:職種別・AIで変わる仕事まとめ/生成AIと著作権
※本記事は2026年8月12日時点の公表データにもとづく解説です。企業事例は白書掲載の図にもとづくもので、特定企業の評価・推奨を行うものではありません。
出典
- 総務省「令和8年版 情報通信白書 データ集」(2026年8月12日確認)
最終更新:2026年8月12日/fondantAI編集部
