研修資料を作る前に決めることがあります。「受講後に何ができるようになるか」です。
これが決まっていないと、網羅的で、定着しない資料ができます。AIに「〇〇の研修資料を作って」と頼むと、まさにそれが出てきます。
この記事の要点
- 受講後の状態から逆算する
- 説明の順序と教える順序は違う
- 自社固有の内容は人が埋める
⚠️ 業務中に参照する手順書はAIでマニュアル・手順書を作る方法で扱っています。この記事は教えるための資料が対象です。
ゴールを1文で決める
「〜を理解する」でなく「〜ができるようになる」で書いてください。
| 悪いゴール | 良いゴール |
|---|---|
| 情報セキュリティを理解する | 不審なメールを見分けて、報告できる |
| 新システムの使い方を学ぶ | 1人で受注入力ができる |
| AIの基礎を知る | 議事録の要約をAIで作れる |
右側は、できたかどうかを確認できます。 左側は確認できません。
確認できないゴールの研修は、やった証拠だけが残ります。
逆算で設計する
以下の研修を設計します。まず構成だけ作ってください。
■受講後にできるようになること:[1文で]
■受講者:[職種、経験年数、前提知識]
■時間:[ ]
■条件:
- ゴールから逆算して、必要な項目だけを挙げてください
- **「知っておくとよいこと」は入れないでください**
- 各項目に、それがゴールにどう必要かを1行で
- まだ本文は書かないでください
「知っておくとよいこと」を排除するのが要点です。
研修が長くなる原因は、ほぼこれです。 教える側は関連知識を全部伝えたくなりますが、ゴールに不要な内容は、定着を妨げます。
説明の順序と教える順序は違う
体系的に整理された順序と、初学者が理解できる順序は一致しません。
| 順序 | |
|---|---|
| 説明の順序(体系的) | 定義 → 分類 → 原理 → 応用 → 例外 |
| 教える順序(理解しやすい) | 具体例 → やってみる → なぜそうなるか → 定義 → 例外 |
AIに任せると、前者になります。 学習した資料の多くが体系的に書かれているためです。
上の構成を、初学者が理解しやすい順序に並べ替えてください。
■条件:
- 定義から始めないでください
- **具体例か、受講者が実際に困る場面**から入ってください
- 用語の説明は、その用語が必要になった時点で入れてください
- 抽象度が高い内容ほど、後ろに置いてください
「用語の説明を、必要になった時点で入れる」——これだけで、資料はかなり読みやすくなります。
演習と確認問題を作らせる
研修準備で最も時間がかかり、かつAIが得意な部分です。
以下の項目について、演習問題を3つ作ってください。
■項目:[ ]
■受講者:[ ]
■条件:
- **実際の業務に近い場面**を設定してください
- 知識を思い出す問題でなく、**判断する問題**にしてください
- 正解が1つに決まらない問題も1つ入れてください(議論用)
- それぞれ、想定される誤答と、その原因も書いてください
「想定される誤答と、その原因」が有用です。
受講者がどこで間違えるかが事前に分かると、そこを厚く説明できます。
確認問題も同様に作れます。
上の項目について、理解度を確認する問題を5問作ってください。
- 選択式3問、記述式2問
- **暗記でなく理解を問う形**で
- 記述式は「〜を説明してください」でなく「〜の場合どうしますか」の形で
- 各問題の正解と、なぜそれが正解かを分けて書いてください
⚠️ 正解の妥当性は、必ず自分で確認してください。 AIが作った問題の正解が、自社のルールと食い違うことがあります。
自社固有の内容を埋める
ここが人の仕事です。 AIが持っていない情報は次の4つです。
| 埋めるもの | 例 |
|---|---|
| 自社の事例 | 実際に起きたトラブル、成功例 |
| 社内のルール | 承認の流れ、金額の基準、禁止事項 |
| 使っているシステム | 画面、操作、独自の用語 |
| 過去の経緯 | なぜこの手順になっているか |
1番目が最も効きます。
一般論の研修は覚えられませんが、「去年、うちで起きたこと」は覚えられます。 実際の事例を1つ入れるだけで、定着がまったく変わります。
ただし、事例に個人が特定される情報を入れないでください。 「〇〇部のAさんが」ではなく「ある部署で」に抽象化します。
PR・おすすめValue AI Writer byGMO高品質なSEO記事を生成するAIライティングツール。公式サイトを見る🔍 編集部の本音 研修資料をAIで作ると、驚くほど早くできあがります。 そして、驚くほど印象に残りません。理由ははっきりしていて、どこの会社でも通用する内容だからです。AIに作らせるのは骨格まで。血肉になるのは自社の事例です。 ここを埋める時間を確保するために、骨格を機械に任せる——という順序で考えてください。
資料の形にする
構成と中身が固まってから、資料の形にします。
- スライドにする場合はAIでプレゼン資料を作る方法
- 配布資料にする場合はAIで資料作成する方法
研修資料に固有の注意が1つあります。
スライドと配布資料を、同じものにしないでください。
| 役割 | |
|---|---|
| スライド | 話しながら見せる。文字は少なく |
| 配布資料 | 後から1人で読める。文字は多くてよい |
両方を1つで済ませようとすると、どちらの用途にも中途半端になります。
研修後にやること
資料を作って終わりにしないでください。
- 理解度の確認(作った確認問題を使う)
- 詰まった箇所の記録(次回の改訂点)
- 実務で使われたかの確認(1か月後)
3番目が最も重要です。
研修で理解できても、実務で使われなければ意味がありません。 使われていない場合、資料でなく業務側の設計に原因がある可能性があります。
法定研修の場合
安全衛生教育など、法令で内容や時間が定められている研修があります。
この場合、要件を満たしているかの確認が必要です。 AIが作った内容が要件を満たすとは限りません。自社の担当部署または所管官庁に確認してください。 この記事では要件に立ち入りません。
社内情報の扱い
- 社内資料をAIに入力する前に、取り扱いルールを確認してください(社内情報を学習させない設定)
- 事例に個人が特定される情報を入れない
- 顧客名・取引先名は伏せる
FAQ
Q. 研修資料をAIに丸ごと作らせられますか?
A. 骨格は作れますが、自社固有の内容は埋まりません。 自社の事例、社内ルール、使っているシステム、過去の経緯——これらを人が埋めないと、どこの会社でも通用する研修になり、印象に残りません。
Q. 資料を作る前に何を決めればいいですか?
A. 「受講後に何ができるようになるか」を1文で決めてください。 「〜を理解する」でなく「〜ができるようになる」の形にすると、確認できるゴールになります。
Q. 研修が長くなってしまいます。
A. 「知っておくとよいこと」を削ってください。 ゴールに不要な内容は、定着を妨げます。各項目が「ゴールにどう必要か」を説明できなければ、外せます。
Q. AIが作った構成が分かりにくいのですが。
A. 体系的な順序になっている可能性があります。 定義から始めず、具体例や受講者が実際に困る場面から入る順序に並べ替えさせてください。用語の説明は、必要になった時点で入れます。
Q. 演習問題は作らせられますか?
A. 得意な領域です。 「実際の業務に近い場面」「判断する問題」「想定される誤答と原因」を条件に入れてください。ただし正解の妥当性は自分で確認してください。 自社のルールと食い違うことがあります。
Q. 法定研修にも使えますか?
A. 要件を満たしているかの確認が必要です。 安全衛生教育など、法令で内容や時間が定められている研修があります。自社の担当部署または所管官庁に確認してください。
まとめ
- 資料を作る前に**「受講後に何ができるようになるか」**を1文で決める
- 「知っておくとよいこと」を入れない。 ゴールから逆算する
- 説明の順序と教える順序は違う。 定義から始めない
- 演習と確認問題はAIが得意。 ただし正解の妥当性は人が確認する
- 自社の事例・ルール・システム・経緯は人が埋める。 ここが定着を決める
- スライドと配布資料は別物として作る
- 1か月後に実務で使われたかを確認する
人事・教育の仕事全体の変化は人事の仕事はAIでどう変わる?、AIが事実でない内容を補う仕組みはハルシネーションとは?にまとめています。
