競合調査は、AIが最も間違えやすい用途の1つです。
企業の情報は変化が速く、価格・人数・拠点・サービス内容は数か月で変わります。AIが返してくるのは、学習した時点の古い情報か、もっともらしく作られた数字であることが珍しくありません。
それでも使い道はあります。役割を「調べる」から「整理する」に変えることです。
この記事の要点
- 企業の最新情報は、AIが最も苦手
- 自分で集めて、AIに整理させる
- 数値には必ず出典を求める
なぜ間違えやすいのか
| 調べたいこと | AIが間違えやすい理由 |
|---|---|
| 料金・プラン | 改定が頻繁。学習時点の価格が返る |
| 従業員数・拠点 | 変化する。決算期で数字が変わる |
| サービス内容 | 新機能・終了した機能が反映されない |
| 導入事例 | 実在しない事例が作られることがある |
| シェア・順位 | 出典によって数字が違う。根拠が曖昧なまま返る |
特に危ないのが4番目です。 「A社は〇〇業界での導入実績が多い」といった記述は、根拠がなくても自然な文章として出てきます(ハルシネーションとは?)。
この情報を社内資料に載せて提出すると、後で困るのは自分です。
手順:集めるのは自分、整理はAI
ステップ1:調べる項目を先に決める
項目を決めずに調べ始めると、集めた情報が比較できません。
以下の目的で競合調査をします。
比較すべき項目を10個提案してください。まだ調べないでください。
■目的:[自社サービスの価格改定の判断材料にしたい/新規参入の可否を判断したい等]
■自社の状況:[ ]
■比較対象:[3〜5社]
- 公開情報で確認できる項目に限ってください
- それぞれ「どこで確認できるか」も書いてください
「どこで確認できるか」を出させるのが要点です。 公式サイト、有価証券報告書、プレスリリース——確認先が明確な項目だけが、後で裏を取れます。
ステップ2:自分で集める
ここは人の作業です。
- 各社の公式サイト(料金ページ、サービスページ、会社概要)
- プレスリリース
- 上場企業なら有価証券報告書・決算資料
- 公開されている統計・業界レポート
ページを保存するか、テキストをコピーしておいてください。 次のステップで渡します。
ステップ3:AIに整理させる
以下は、3社の公式サイトから取得した情報です。
先ほど決めた10項目の比較表を作成してください。
■条件:
- 貼った情報にない項目は「記載なし」としてください
- **推測で埋めないでください**
- 各項目について、どの会社の情報から取ったか分かるようにしてください
- 数値は元の表記のまま転記してください
[各社の情報を貼る]
「推測で埋めないでください」「記載なしとしてください」を必ず入れてください。 入れないと空欄が埋められます。
この形なら、材料は自分が集めたものだけなので、存在しない情報は混ざりません。
ステップ4:差分を読ませる
表ができたら、そこから何が言えるかを聞きます。
上の比較表について、次を挙げてください。
1. 3社で明確に違う点
2. 3社に共通している点
3. **この表からは判断できないこと**(追加で調べるべき項目)
- 表にない情報を使わないでください
3つ目が有用です。 「価格は分かったが、サポート体制が比較できていない」といった穴が見えます。
🔍 編集部の本音 競合調査でAIに「A社について教えて」と聞くのは、いちばんやってはいけない使い方だと思います。返ってくるのは、古い情報と創作の混合物です。でも、自分が集めた公式ページを渡して表にさせるのは速い。 材料を自分で持つかどうかで、道具として使えるかどうかが決まります。
調べる機能を使う場合
ウェブを検索して調べる機能(ディープリサーチ等)を使う場合も、確認は必要です。
利点: 出典のリンクが付くため、確認できる形になります。
注意点:
- 出典が示されていても、その中身が正しいとは限りません(引用元が二次情報の場合があります)
- リンクが実在するかを確認してください
- 公式サイトの情報と、まとめサイトの情報を区別してください
数値を使う場合のルールは1つです。
「出典の出典」まで戻る。 まとめ記事に書かれた数値は使わず、その記事が引用している一次情報に当たってください。
使い方はChatGPTのディープリサーチの使い方にまとめています。
出典を確認する2段階
上の調査結果について、数値が出てくる箇所すべてに
出典を明記してください。
- 出典が特定できないものは「出典不明」と書いてください
- 推測で出典を補わないでください
返ってきた出典を、自分で1つずつ開いてください。
- URLが実在するか
- そのページに、その数値が本当に書かれているか
- いつの情報か(何年何月時点か)
この工程を飛ばすと、調査資料が「もっともらしい嘘の集合」になります。
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| やってはいけないこと | 理由 |
|---|---|
| 他社の非公開情報を集める | 営業秘密の問題になります |
| 規約に反する自動収集 | サイトの利用規約で禁止されている場合があります |
| 取引先経由で得た情報を使う | 守秘義務の対象である可能性があります |
| 元従業員から聞いた内部情報を資料に載せる | 同上 |
| 他社の資料をそのまま流用する | 著作権の問題になります |
サイトごとに利用規約は異なります。 自動での情報収集を検討する場合は、対象サイトの規約を確認してください。この記事では法的な判断には立ち入りません。
公開情報だけで、比較表は十分に作れます。
調査結果を資料にするとき
- 数値には必ず「〇年〇月時点」を付ける(企業情報はすぐ古くなります)
- 出典を明記する(後から確認できる形に)
- 推測と事実を分ける(「〜と考えられる」と「〜である」を混ぜない)
- AIが生成した部分と、自分が確認した部分を区別する
資料の作り方はAIで資料を作成する方法、企画に落とす段階は企画職の仕事はAIでどう変わる?にまとめています。
FAQ
Q. AIに「競合他社を調べて」と頼んでもいいですか?
A. おすすめしません。 企業情報は変化が速く、学習時点の古い情報か、もっともらしく作られた内容が返ってきます。自分で公式サイトから集めた情報を渡し、整理させる使い方のほうが確実です。
Q. ディープリサーチのような検索機能なら大丈夫ですか?
A. 出典が付く分は改善しますが、確認は必要です。 出典が二次情報(まとめ記事)の場合があります。数値を使うときは、その記事が引用している一次情報まで戻ってください。
Q. 導入事例や実績の情報は使えますか?
A. 最も注意が必要な項目です。 実在しない事例が生成されることがあります。各社の公式サイトに掲載されている事例だけを使ってください。
Q. 競合の価格を調べるとき、何に気をつければいいですか?
A. 公式の料金ページを自分で開いて確認してください。 価格改定は頻繁で、AIが返す価格は古い可能性が高くなります。取得した日付も記録してください。
Q. 他社サイトの情報を自動で集めてもいいですか?
A. サイトの利用規約を確認してください。 禁止されている場合があります。法的な判断は事案によるため、この記事では踏み込みません。公開情報を手動で確認する範囲で、比較表は十分に作れます。
Q. 調査結果を社内資料に使うときの注意は?
A. 数値に「〇年〇月時点」を付け、出典を明記してください。 また、AIが生成した部分と自分が確認した部分を区別しておくと、後で問われたときに答えられます。
まとめ
- 競合調査はAIが最も間違えやすい用途。 企業情報は変化が速く、創作も混ざる
- 役割を反転させる。 集めるのは自分、整理するのがAI
- プロンプトに**「推測で埋めない」「記載なしとする」**を入れる
- 数値には出典を求め、その出典を自分で開いて確認する
- 出典の出典まで戻る。 まとめ記事の数値は使わない
- 他社の非公開情報、規約に反する収集、守秘義務の対象には踏み込まない
- 資料化するときは時点・出典・推測と事実の区別を明記する
長い資料の読ませ方はAIに長い資料を読ませるコツ、指示の出し方の基本はプロンプトの基本にまとめています。
